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『令和6年度小中高生起業家人材育成事業』活動レポート

成果報告 小学生起業家たまご塾 NAGOYA TEENS AI CAMP 起業体験プログラム そらLab スタートアップ・ユースキャンプ

2025.05.08

視野を広げ、知見を深めるプログラムが未来のアントレプレナーを育てる

本市では令和2年度から起業家人材を育成する取り組みを開始し、これまでの5年間で5,000名以上の児童・生徒に参加いただいています。
令和6年度は、小学生・中学生・高校生を対象に参加者を募り、成長段階や関心に応じたプログラムを実施し、約1,000名の方が参加しました。また、学校の授業としても新たに実施しましたので、併せてご紹介します。
この取り組みにより、次世代を担う子どもたちが、起業家精神を育み、将来の多様な選択肢を広げることを目指しています。

1.【小学生】起業家入門プログラム「小学生起業家たまご塾」

ゲームを通じて社会や経済の仕組みを学ぶワークショップや、保護者とともにアイデア創出を学ぶワークショップを開催しました。

小学生起業家たまご塾

開催日:7月27日、7月28日、8月24日、11月10日
場所:なごのキャンパス

ゲームを通じて社会や経済の仕組みを学び、起業家との交流を通して、楽しく起業を知るワークショップを実施しました。小学4年生~6年生を対象に4日間、各日午前・午後の計8回開催し、405名に参加いただきました。

プログラムは、「みんなの経済カードゲーム」から始まります。新しく価値のある生産物をつくり、売り上げを伸ばしていく過程で、経済の仕組みやチームで協力することの大切さを学びました。
次に、自分の強みを見つけるため、60の質問からなる「適性検査」を実施。カードゲームの中で、自然と強みを発揮していたことに気づくことで、自己理解を深めました。

  • 「みんなの経済カードゲーム」

続いて「起業家のお話」として、起業家、起業家と一緒に働く人、起業に挑戦中の大学生など、さまざまな立場の方と交流の機会を設けました。普段は聞けない貴重な話に、興味津々で質問する積極的な姿が見られました。

  • 地元起業家のお話

最後の「未来創造ディスカッション」では、ワークショップ全体の締めくくりとして、「こんなものがあったらいいな」を考えてグループ内で発表を行いました。子どもたちは、起業家からのアドバイスによってなにげない疑問やアイデアが起業につながっていくことや、起業によって身近な社会課題が解決できることを実感しました。

社会や未来に興味を持ち、自分の考えを発信する機会を提供することで、”自分で考え、動く”ことを楽しむきっかけをつくれたのではないかと思います。

  • 未来創造ディスカッション

参加した起業家の方々(以下、すべて敬称略)

  • 加藤喜昭(テクノレボリューションズ合同会社CEO)
  • 鳥羽伸嘉(ピノベーション株式会社代表取締役)
  • 鵜飼幸子(株式会社HALO代表取締役)
  • 岡田庸平(株式会社RUNGO代表取締役)
  • 宮田豊(AZAPA株式会社取締役)
  • 岩田圭祐(グランドグリーン株式会社CFO)
  • 北條佳菜恵(グランドグリーン株式会社経営管理部)
  • 小和田仰生(株式会社2ND Star/岐阜大学)

アンケート結果

  • 「起業に興味を持った」94.2%

参加者の声

「カードで学べることがおもしろいし、うまくいかないこともあるんだと感じました」
「ゲームはとても大忙しでしたが、いろいろな人に話を聞いたりできて、また来てみたいと思いました」
「カードゲームや起業家に関係がある人たちに話を聞いて経済について楽しく学べた」

小学生起業家たまご塾 親子ワークショップ

開催日:10月6日
場所:なごのキャンパス

小学生起業家たまご塾に参加経験のある小学生対象に、保護者とともにアイデア創出を学び、起業家と交流するワークショップを実施しました。「わたしの起業アイデア」をテーマにした2分のプレゼン動画とともにご応募いただいた親子18組が参加しました。

まず、保護者や起業家にもチームをつくっていただき、上級ルールの「みんなの経済カードゲーム」から始まりました。
途中で価格変動が起こり、その社会の変化にどうやって対応するかが求められ、頭を悩ませながら子どもも大人も楽しみました。

次にグループごとに自分の考えてきたアイデアを発表するアイデアピッチ交流を行いました。各グループにはメンターとして起業部に所属する大学生や起業家、また保護者も加わり、気づいた点や改善点を伝えつつ、付箋に書き込み発表者に渡しました。発表した子どもたちは、もらった付箋を自分のワークシートに貼り付けていきました。

  • アイデアブラッシュアップ

アイデアブラッシュアップでは、各グループに大学生メンターが付き、「みんなからもらったアドバイスをもとに、もっと良い発表ができるように準備をしよう」という目標を掲げて、「誰のために」「どうやって」「なぜそれをしようと思ったのか」という原点に立ち返り、もう一度発表を組み立て直しました。

  • アイデアピッチ交流

子どもたちがアイデアブラッシュアップに取り組む間に、保護者の皆さんは、起業家とのディスカッションに参加しました。「これからの子どもたちに求められる力」をテーマにグループを組んで自由にディスカッションをしました。「子どもだけでなく親も起業していいんだという言葉にはっとさせられた」「いい高校いい大学という発想だけでなく選択肢として起業があるということが改めて感じられた」といった感想が聞かれ、活発なディスカッションとなりました。

  • 起業家とのディスカッション

最後のアイデアピッチでは、短時間でブラッシュアップしてきた子どもたちの発表に参加者全員から拍手が沸き起こりました。全体の発表ではグループを代表して発表したいという子が多く、子どもたちのやる気と自信を感じることができました。感想発表でも、児童、保護者ともに満足度の高い声が多く聞かれ、大盛況のワークショップとなりました。

  • アイデアピッチ・感想発表

参加した起業家の方々

  • 加藤喜昭(テクノレボリューションズ合同会社CEO)
  • 鳥羽伸嘉(ピノベーション株式会社代表取締役)
  • 鬼木利瑛(株式会社eight代表取締役)
  • 宮田豊(AZAPA株式会社取締役)
  • 竹本悠人(株式会社Quastella代表取締役CEO)
  • 西谷健治(株式会社U-MAP代表取締役)
  • 小和田仰生(株式会社2ND Star/岐阜大学)

アンケート結果

  • 「起業に興味を持った」94.5%

参加者の声

「自分の意見をブラッシュアップできた」「自分の意見を言えることで他者との共感ができるのでとてもいい」「自分のアイデアを、いろんな人に付け足してもらって、夢が広がった」(参加した小学生)

「自分が参加して実際やってみることで、どんなに難しいかがわかり、もっと楽しくなった。ブラッシュアップという言葉にびっくりしました。子どもってかしこいんだなと思った」「引っ込み思案な子ですが、このような機会に恵まれ自分で考えた意見を堂々と発表できたことをうれしく思います」(参加した保護者様)

参加者インタビュー

「今回はたまご塾とワークショップに参加しました。もともと“お笑い子ども塾”というやりたいことがあり、これをどうやったらできるのかを知りたいと思い参加しました。ワークショップで発表して起業家の方や大学生の人に褒めてもらえたことが自信になって、そのあと実際に芸人の人や商店街の人に相談をして実現することができました。ワークショップで学んだことをもとにこれからも自分のことを信じてどんどん前に進んでいきたいと思います」(小学校6年生)

「街をよくしたいとか、子どもが集まる場をつくりたいとか、当人には夢がたくさんあるようです。多くの人にかかわって、自分のやりたいことを人に伝えられるようになってほしいと思い、今回参加を決めました。本人は失敗したらどうしようと考える傾向がありましたが、失敗ではなく挑戦だと思えるようになったのが今回の一番の収穫でした。参加後は自分の言ったことややったことへの責任感が出てきたのが大きな変化ですね」(参加した保護者様)

2.【中学生高校生】IT・AI活用プログラム「NAGOYA TEENS AI CAMP」

AIを活用したプログラミング体験や起業家との交流、課題解決型のワークショップを通じて、実際にアイデア創出からプロダクト開発ができる知識とスキルを身に付け、創造性や問題解決能力を伸ばすプログラムを開催しました。

AIプログラミング体験

開催日:7月13日、7月14日
場所:なごのキャンパス

ITものづくりの楽しさと起業という選択肢を知ってもらうため、参加者のレベルに応じた3つのコースを用意し、AIを活用したプログラミングを体験するワークショップを実施。201名が参加しました。

初級者向けのAコースでは、「AIと対話する」をテーマに、最先端のAIモデルであるChatGPTを活用し、AIと対話しながら簡単な電卓Webアプリケーションを作成しました。習得が早かった生徒は、色のカスタマイズや追加機能を実装しながら、プログラミングの楽しさを実感しました。

中級者向けのBコースでは、「AIを活かす」をテーマに、ChatGPT APIを組み込んだ「お料理レシピ生成アプリ」の開発に挑戦してもらい、既存のWebアプリケーションにAIChatBotを組み込むという体験をしました。

中級者・上級者向けのCコースは、13日と14日の2日間を通して「AIを使い倒す」をテーマに、ハッカソン形式でAIを活用したサービスのアイデアを出し合い、実際にWebアプリケーションの開発をチームで協力して行いました。

また、最新技術を使用したガジェット体験やITを活用した事業を行う起業家との交流を実施し、AIや起業を身近に感じてもらえる機会を設けました。

起業家講演

  • 下山紗代子(一般社団法人リンクデータ)

アンケート結果

  • 「起業に興味を持った」91.9%

  • 「IT・AIに興味を持った」97.9%

参加者の声

「実際に起業した人の話を聞いたのは初めてだったので、良い経験になったと思います」
「起業家の皆さんが生き生きとして見えて、起業という選択肢が魅力的に感じられました」
「プログラミングはスクラッチでしかやったことがなかったので、本格的なプログラミングができて楽しかったです」

TEENS AI CAMP講演会

開催日:9月16日
場所:ナゴヤイノベーターズガレージ

実際にAIを活用したサービスを手掛けている起業家をはじめ各界の著名な方をお呼びし、AIと起業の魅力について語っていただく講演とパネルディスカッションを実施しました。

パネルディスカッションでは、「わたしの学生時代」「起業ストーリー」「AI×ビジネスの未来」という3つのテーマに沿ってディスカッションをしていただきました。起業家の学生時代の過ごし方を聞くことで、起業を身近に感じてもらうことができました。

当日はリアルとオンラインのハイブリッド方式で開催し、87名の方に参加いただきました。終了後に実施したファイヤーサイドチャット(交流会)も、4名のゲストを参加者が囲み、全体では質問できなかった生徒も含め質問が飛び交う盛況ぶりでした。

登壇者

  • 及川卓也(Tably株式会社代表取締役)
  • 利根川裕太(特定非営利活動法人みんなのコード代表理事)
  • 鈴木敦子(神山まるごと高専副校長)
  • 杉原美智子(フォーアイディールジャパン株式会社代表取締役社長)

アンケート結果

  • 「起業に興味を持った」94.3%

AIビジネス創出ワークショップ

場所:イノベーターズガレージ

ビジネスアイデアを考えるだけでなく、AIやプログラミングを活用して、地域や企業が抱える課題に対するソリューションを、チームで協力しながら創出する全7回のプログラムを実施しました。具体的なプロダクトまで作成する、実践的なプログラムとなりました。

企業の課題を知る×AI技術を学ぶ(10月20日)

企業が直面する課題やその解決事例について学ぶため、各企業の講師から直接知見を得る機会を設けました。AIを活用したビジネスアイデアの創出方法や、AI技術の具体的な活用例を学び、課題解決に向けた実践的な知識を身につけました。また、参加者は、OpenAI APIを使った試作やAIとの対話を通じて、AI技術の活用方法を学びながら、アプリケーションを作成し、AIを活用した実践的なプログラミングスキルを身につけました。

講師

  • 佐藤浩太郎(株式会社LIGHTzゼネラルマネージャー)
  • 南條融(株式会社サウスラインテクノロジーCEO)
  • 加藤敏之(LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社AI運営部部長)

アイデア創出×ビジネス設計(10月26日)

実際の課題やビジネスアイデアをかたちにする時に、どのような方向から考えれば良いのか、多方向からアイデアをかたちにする方法を学習しました。また、課題提供者である企業や大学から、直面している課題を聞き、それらの課題を解決するプロダクトについてチームごとに解決策を考えました。

課題提供者と課題

  • カリモク皆栄株式会社「共働き・子育て女性が抱える問題」
  • 名古屋工業大学「まちのゴミ問題」
  • 株式会社矢場とん「AI店員を活用した店舗営業のエンタメ化」
  • 株式会社アイガ「エンジニアの適性にマッチした案件の獲得」

プロダクト開発×プレゼン準備(11月2日、11月3日、11月10日、11月16日)

各チームで選択した企業課題に対するアイデアの議論を行いました。アイデア創出ワークショップで学んだ手法を生かし、チーム内でのアイデアをかたちにしていきました。アイデアがまとまったチームは、目標を定めたプロダクトの開発に着手。また、アプリ開発と並行して「canva」というツールを活用しプレゼン資料作成を行いました。
AIの活用としては、アイデアの壁打ちやコード生成、ChatGPT APIを利用し自身のプロジェクトに導入するグループもあり、AIをうまく活用していたように思います。

発表会×振り返り(11月23日)

課題提供を受けた各社から、発表についての感想や総評をいただきました。
最後に各チームで振り返りを行った後、他チームのアプリを体験する交流会を行いました。
「引き続き活動したい」「新しいプログラムに参加してみたい」など、次の挑戦に意欲的な姿が印象的でした。

アンケート結果

  • 「起業に興味を持った」96%

  • 「IT・AIに興味を持った」100%

参加者の保護者様の声

「素晴らしい機会をありがとうございました。早速帰宅して持ち帰ったものを復習、家族にどのようにつくったか説明してくれました。またご案内よろしくお願いいたします」
「今回同じ中高生でも非常にレベルの高い子がいたようで、とても刺激を受けていました」
「目をキラキラさせて、『楽しかった』と帰ってきました。うれしそうに1日の出来事を話してくれて親としても参加させて良かったなと思いました」

参加者インタビュー

「小学校からプログラミングスクールに通っていましたが、AIはChatGPTを使ったこともありませんでした。今回参加して変わったのは、AIを利用することで問題解決のスピードが目に見えて早くなったことです。あとはスクールでは流れの中でスキルを与えられていましたが、今回参加して自分の意志で解決策を探しに行くことの大切さがわかったような気がします」(中学2年生)

「プログラミングは小学校6年生の自由研究で最初に経験しました。今回一番良かったのはチームで活動ができたことです。チームで議論をしながら合意形成をしながら進めていくことができたのがよかったと思います。将来はAIや機械学習を利用してプロジェクトを進める仕事がしたいと考えています。以前はハードルが高く感じた起業に対しても少し興味がわいてきました」(中学3年生)

「僕も小学校の自由研究がゲームをつくったのがプログラミングを始めたきっかけでした。今回は本格的なプログラミングを学ぶことができてものすごく楽しかったです。いいメンバーに出会えたこともよかったです。将来はAIを使ってゲームやアプリをつくってみたいと思います」(中学2年生)

3.【高校生】起業体験プログラム「スタートアップ・ユースキャンプ」

起業家による講演会や、起業するために必要な知識の提供やビジネスプランの作成を通じて起業を体験する実践的なプログラムを実施しました。

講演会「TEENS meetup」

開催日:7月7日
場所:ナゴヤイノベーターズガレージ

将来の選択肢として起業を知り、将来の生き方を考えるきっかけにしてもらうことを目的に、起業家による講演やパネルトークを実施しました。

 講演会では、3名の起業家を講師として招き、講師が現在の事業内容や、中高生時代の経験から今につながっていること、起業のきっかけなどを話しました。パネルトークでは、起業のメリットデメリットについてパネリスト同士が本音で語り合いました。

 講演会後はワークショップ「スタートアップユースキャンプ」の説明会を行いました。説明会では、前年度の参加者2名が登壇し、ワークショップでのそれぞれのエピソードを語っていただきました。

リアルとオンラインのハイブリッド方式により開催し、58名の方が参加しました。終了後には、起業家に質問をしたい参加者で列ができるほど、活発な交流の場になりました。

登壇者

  • 重松大輔(株式会社スペースマーケット/代表取締役社長)
  • 岡島礼奈(株式会社ALE代表取締役/CEO)
  • 久世琢真(株式会社Arts Japan代表取締役/CEO)

アンケート結果

  • 「起業に興味を持った」100%

ワークショップ「スタートアップユースキャンプ」

場所:ナゴヤイノベーターズガレージ

起業に関する実践的な知識や情報、心構え等を習得しつつ、ビジネスアイデアの創出等を通じて実際の起業を体験する全6回のワークショップを開催しました。

モジュール1 スモールビジネスチャレンジ〈「ビジネスをつくる」体験〉(7月20日、8月3日)

プログラム初日は、即興演劇やレゴブロックを活用したチームビルディングを行った後、チームごとに疑似的な株式会社を設立し、ビジネスアイデアを検討。2日目までの約2週間をビジネス実践期間とし、事業資金2万円で、チームごとの事業活動に取り組んでもらいました。また、リーガル・コンプライアンスについて、実際の弁護士2名から助言を受けました。

2日目は、2週間で実施したビジネスの結果発表の場として株主総会を実施しました。またモジュール1の期間中、オンラインによる「起業の基礎講座」を5日間開催し、起業する上で必要な知識を学びました。

モジュール2 スタートアップチャレンジ〈「課題解決のアイデアをつくる」体験〉(8月4日、8月10日、8月17日)

参加者が主体的にテーマを提案し、それを軸にグループをつくりながら対話を深める「マグネットテーブル」という手法を活用し、「スモールビジネスチャレンジ」とは別の新たなチームを組みました。実務家コーチ4名に参加いただき、1チーム1コーチ専属で壁打ちの時間を設けたことにより各チームの事業内容が一気にブラッシュアップされました。

実務家コーチ

  • 水谷岳史(株式会社On-Co/代表取締役)
  • 河合将樹(株式会社UNERI/代表取締役CEO)
  • 我堂佳世(株式会社我堂/代表取締役)
  • 今井咲希(合同会社Maliy/代表社員)

発表会では、スタートアップチャレンジの成果を6チームが本物の起業家さながらのプレゼンテーションをしました。審査員がそれぞれの評価を持ち寄りスタートアップユースキャンプ最優秀賞、優秀賞、日本公庫賞の3つの賞にふさわしいチームを選定しました。

審査員

  • 重松大輔(株式会社スペースマーケット/代表取締役社長)
  • 久世琢真(株式会社Arts Japan代表取締役/CEO)
  • 工藤秀利(日本政策金融公庫/国民生活事業本部名古屋創業支援センター・名古屋スタートアップサポートプラザ所長)

モジュール3 リフレクション&アクション(8月24日)

プログラム最終日は、全体の振り返りのセッションとして今までの体験を咀嚼し、これからの生活や進路選択で活かせる学びを抽出しました。

チーム活動をともにした仲間同士で、自分を「祝い」、他者から「祝われ」、強み、感謝、成長したところを伝え合うことで、自分だけでは気づかない振り返りを言語化し、この1カ月を振り返るワークを、コーチやメンターなどプログラムに関わる大人含めて全員が参加して実施しました。「ネクストステップワーク」として、明日以降でそれぞれが取り組みたいことを具体的に書き出し皆の前で発表することで次への挑戦を共有し刺激し合う熱い時間となりました。
最後に修了証を授与し、頑張りを称えあいました。

アンケート結果

  • 「起業に興味を持った」96.9%

参加者の声

「起業は特別な人が特別な力で行うものだと思っていましたが、どんな人でもアイデアと努力次第で起業することができると思っています」
「よくわからないハードルの高いものからやればできることに変わった」
「このプログラムに参加して起業をしたいと以前より強く思ったし、起業した後の未来がクリアに見えるようになった」

参加者インタビュー

「知り合いの高校生起業家に憧れていましたが、まわりに学ぶ環境がなかったので具体的に何をしたらいいのかわからずに高校生活を送っていました。今回の参加は起業のための活動のきっかけになりました。一歩踏み出していなかったら、この人にもこんな環境にも出会えていなかった。今は起業が生活のメインとなっていて、それが楽しい」(高校1年生)

「小中学生時代は、一人で突っ走って人を頼ることが苦手でした。ワークショップに参加して、チームのみんなで意見を出し合いながら、お互いを信頼して、協力して仕事に取り組むことができ、仲間の大切さを感じました。あとは、議事録の重要性を学びました。これなら今すぐできると思い、今も議事録を書いて共有する習慣を継続しています」(高校1年生)

4.【高校生】ディープテックプログラム「そらLab」

大学や研究機関で研究開発された技術をもとに、世の中の生活スタイルを大きく変えたり、社会の大きな課題を解決するテクノロジーである”ディープテック”の集積は、当地域の大きな特徴です。その特徴を生かし、ディープテック分野における起業家の創出を促進するため、宇宙や起業に関する講演会のほか、宇宙をテーマにした実践的なワークショップを開催しました。

キックオフ講演会

開催日:7月15日
場所:名古屋大学Idea Stoa

宇宙分野や創造的な思考法に知見のある起業家・クリエイター等3名にご講演いただきました。宇宙への興味を高め、新しいモノやサービスを生み出すヒントが得られました。

イベントの後半で行われたワークショップは、参加者が自分の興味や関心を深く掘り下げ、論理的に自己理解を深めるとともに、創造性やコミュニケーション能力を高める場となりました。

最後に、次のステップである仮説検証ワークショップに進むための提出課題が発表されました。好きなものや得意なものと宇宙を結び付けたビジネス展開案を考え、その実現に向けた実験として行う高度3万mの成層圏へのスペースバルーンの打ち上げにおいて、どのような機体を作成するかという課題でした。参加者自らが実験を考え、試作したモジュールを専門チームが成層圏へと送り出すことも発表され、次なる展開に期待をふくらませる生徒の顔が印象的でした。

登壇者

  • 藤原謙(ウミトロン株式会社/CEO)
  • 平松レイナ(いたずらクリエイティブ集団URO/にやにや担当(プランナー))
  • 山本大凱(名古屋大学宇宙開発チームNAFT副代表)

アンケート結果

  • 「起業に興味を持った」85.1%

仮説検証ワークショップ

場所:名古屋大学Idea Stoa

高校生自らがアイデアを考え、試作し、優れたアイデアを専門チームの協力のもとで成層圏まで打ち上げ、実践的に検証するワークショップを実施しました。

キックオフ(7月31日)

課題選考により選出された8チームに各チーム1名の大学生メンターが加わり、アイデア実現および仮説検証のプロジェクトを発足させました。この説明会ではスペースバルーンや成層圏の基礎知識を学び、ワークショップ形式で具体的な実装方法のアドバイスやビジネスプランについてもブラッシュアップをしました。

中間発表・公開審査会(8月20日、9月8日)

1カ月にわたったプロジェクトの発表の場として中間発表会と公開審査会が開かれました。審査は3名の専門家を審査員として招き、企画案(着眼点)、実装の完成度、ビジネスプラン、プレゼンテーションについて、審査員が評価し、フライトオペレーションへ進む5チームが選出されました。

審査員

  • 河野廉(名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部スタートアップ推進室 教授)
  • 木野瀬友人(名古屋市客員起業家)
  • 佐原理(徳島大学大学院 社会産業理工学研究部社会総合科学域 教授)

フライトオペレーション(10月24日)

選出された5チームが考えたアイデアをスペースバルーンに乗せ、和歌山県串本町の橋杭漁港から打ち上げました。
その後最終審査に向けて、打ち上げの結果を各チームで分析しアイデアのブラッシュアップを図りました。

最終審査会(11月10日)

フライトオペレーションを振り返り、それを受けて5チームがプレゼンテーションを行いました。公開審査と同じ3名の審査員が、結果を考察し、改善案を考えているかという現状認識と、新たな仮説を立てて「次」を考えているかという今後の展開案について、審査を行い、海外視察に行ける最優秀チームと優秀チームの2チーム8名が選出されました。

海外視察(2025年3月22日~3月28日)

仮説検証ワークショップにおける最優秀チームと優秀チームの8名が、航空宇宙産業の集積地であるアメリカワシントン州のシアトルを訪れ、現地大学の研究室との交流や宇宙産業の関連施設等の見学を行いました。

アンケート結果

  • 「起業に興味を持った」93.6%

  • 「宇宙分野に興味を持った」100%

参加者の声

「私が今まで知らなかった視点から物事を見ている人たちの話を聞くことができて、とても興味深く、勉強になりました」
「興味のある分野について学びを深めることができ、有意義な時間を過ごすことができました。とても面白かったです」

参加者インタビュー

「昨年度の「そらラボ」に参加した先輩に勧められて参加しました。起業や経済というより、ものづくりや理学的なことに興味がありました。今回の成層圏で取り組みをきっかけに、今までよりもっと宇宙に対する関心やものづくりに対する関心が高まりました。起業にも関心が出てきて、新しい視点を持つことができてよかったです」(高校1年生)

「他の3人に誘われて参加しました。もともと所属する天文部でスペースバルーンには取り組んでいますが、アイデア出しから始めてプレゼンテーションするプロジェクトのようなことはしたことがなかったので良い経験になると思いました。プロジェクトでは4人で意見を出し合うことにより、より良いものができることを実感しました」(高校1年生)

「自分も先輩に勧められて講演会に参加してみて、ワークショップへの参加を決めました。プロジェクトに取り組むことで、起業の世界への関心が高まり、挑戦してみたいと思えるようになりました。短い高校生活ですが、自分でも何かプロジェクトを立ち上げてみたいと思います」(高校1年生)

「他のメンバーに誘われて参加しました。天文部の活動にも役立ちそうだと思いました。今回の題材となった有松絞りの職人さんとの交流や、他のチームのアイデアなど、自分にはないものが多く、すごく刺激的でした」(高校1年生)

5. その他

教育委員会と連携し、学校教育におけるキャリア教育の一環として小学校2校と中学校2校で起業家教育授業を実施しました。また、教職員・キャリアナビゲーター向けに説明会を実施しました。

小学生起業家教育事業

2025年1月に牧の原小学校と大野木小学校で、それぞれ「小学生起業家たまご塾 出前授業」を実施しました。「みんなの経済カードゲーム」を使って、社会の中の“ものを売る”“ものを買う”という仕組みの中で“ものをつくって売る”ことが、“経済をまわす”“地域を支える”につながることを知り、児童たちに生産物をつくり売り上げを伸ばしていく過程で、経済の基本的な仕組みやチームで協力することの大切さを学びました。最後に、起業家さんから新しい時代を自分らしく生きるヒントをつかむためのお話を聞き、起業を知るきっかけを提供しました。

アンケート結果

  • 「起業に興味を持った」94.8%

参加者の声

「中学校などに行っても、社会経済の出前授業などをやって学んで、将来のために生かせるようにしたいです」
「起業の事についていろいろと教えてくださりありがとうございました」
「将来仕事につくときにも今回のカードゲームのようにチームワークを大事にしていきたいと思います」

中学生起業家教育授業

身のまわりの課題に目を向け、グループで協力しながら1人1つ起業アイデアを考案し、地元の起業家や投資家の前で全参加者が発表に挑戦しました。南陽中学校では6月から、大曽根中学校では9月から、それぞれクラスをかえながら8コマの授業を3セット実施しました。

アンケート結果

<参加前>(大曽根中学校)

  • 「起業に興味を持った」87.5%

<参加後>(大曽根中学校)

  • 「起業に興味を持った」100%

参加者の声

「身近な困りごとから商品が生まれる。人は、困りごとを解決するためにお金を出すということに気づいた」
「起業自体はとても難しいことに思えるけど人々の困りごとを解決しようと向き合う姿勢が大事だと気づけました」
「起業をするにはサービスを利用するお客さんのことを考えることが大事」

教職員・キャリアナビゲーター向け起業家教育説明会

開催日:2025年2月
場所:オンライン

起業家教育(アントレプレナーシップ教育)についての理解を深めることを目的に、本事業の説明や上記の中学生起業家教育授業で実施したワークショップの体験を取り入れた説明会を開催しました。「とても理解が深まった」「ビジネスに限らず人生において非常に大切」「起業家教育は、社会に出た時の大きな糧になると思った」といった声を多数いただき、相互に新しい学びや気づきを得られた時間となりました。