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東海地区最大規模!スタートアップの祭典『TOCKIN' NAGOYA 2024』開催レポート~Day1~
TOCKIN' NAGOYA 成果報告 お知らせ
2024.03.29
今年で3回目の開催となる『TOCKIN’ NAGOYA 2024』は、愛知県、名古屋市、中部経済連合会、大学(Tongali)がタッグを組み、東海圏のスタートアップを熱く応援する祭典です。2月29日・3月1日の2日間にわたり、ビジネスプランピッチやトークセッションなど、スタートアップに関する20以上のイベントを連続的に行いました。熱気溢れる2日間の様子を、ライブレポート形式でお届けします。
Day1
1.オープニングセレモニー
『TOCKIN’ NAGOYA 2024』開幕を華やかに彩るオープニングゲストは、名城大学のアカペラグループ「ドレミソ煮込みうどん」!メンバーはメインボーカルのたちはる、コーラスのペルカ&マノフィー、ベース・ボイスパーカッションのバズで構成される4人組です。ジャズ調にアレンジしたジブリ楽曲で始まり、録音したフレーズを重ねて再生する「ルーパー」という機材を用いたボイスパーカッションや動物の鳴き声を重ねた歌唱など、オリジナルな歌詞を織り交ぜて会場を美しいハーモニーで華やかに盛り上げてくれました。
開会挨拶として中部経済連合会の水野明久氏からビデオメッセージをいただき、名古屋市経済局スタートアップ支援室長の鷲見敏雄氏よりCentral Japan Startup Ecosystem Consortiumの取り組み紹介がありました。
いよいよ基調講演のスタートです。
登壇していただくのは、株式会社Paidy代表取締役社長兼CEOの杉江陸氏、
テーマは「Paidy成功の裏側とユニコーン企業を生み出すスタートアップマネジメント」です。
Paidyを3000億円でM&Aされるユニコーン企業へと成長させた「成功の鍵」についての秘話に始まり、話は若手世代へのエールへと進みます。「リーダーとは、社会の役に立つために、多くの人の力を借りられる人」「自分で自分の運命を決める」「人脈・現場経験・新規事業、この3つを大切に」「自分で人生を選択すると幸福になる」「創業者に大切なのは経験からくるチーム編成力、これが成功への近道だ」と次々に繰り出される杉江氏からのメッセージは、話の流れのなかでストンと腑に落ちるものばかり。本を読もう、インプットを増やそう、英語はできるようになろう、とアドバイスもいただきました。
最後に「私は世の中に新しいものを生み出そう、という気持ちが大好きです。スタートアップのいろはの「い」は、‘誰の役に立つのか’を考え抜くこと。あなた方の‘この指止まれ’という志を全力で応援したい。未来を一緒につくりましょう」と熱い想いを届けてくれました。
質疑応答から抜粋してご紹介します。
Q.現在副業をしながらスタートアップ事業を行っています。大型の設備投資が必要となり、資金を副業で補うことが難しい場合はどうすればいいでしょうか?
A.資金調達のために考え抜いてください。あなたの事業に共感するストーリー(エクイティストーリー)はありますか?エクイティストーリーを磨くのはスタートアップの1丁目1番地です。
2.Tongali Demo Day 2024
「Tongali」が提供するプログラム「ビジネスプランコンテスト」や「アイデアピッチコンテスト」等で受賞した13の学生チームが、自身のビジネスプランやアイデアを紹介するピッチです。今年は高校生の受賞者も!
主催者挨拶として名古屋大学総長 杉山直氏より「『Tongali』とは、東海地区(4県、24大学)の大学コンソーシアムによる起業家育成プロジェクトで、現在84のプログラムを提供し、5,000名を超える学生が参加しています。今年のコンテストにおいては過去最高のエントリーがあり、当地区での盛り上がりを実感しています。」とお言葉をいただきました。
コメンテーターは以下の5名の方々です。
- 株式会社Subtitle 代表取締役社長/名古屋市客員起業家
加藤 厚史 氏 - 日本ベンチャーキャピタル株式会社 専務執行役員
北岡 侑子 氏 - 名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部 本部長
佐宗 章弘 氏 - Beyond Next Ventures 株式会社 執行役員/パートナー
橋爪 克弥 氏 - IDEAPOST株式会社 代表取締役社長
平山 雄太 氏
- 氏名五十音順
はじめに、アイデアピッチコンテストで「Tongali賞」を受賞した4チーム「F4one」「学檄プロジェクト」「逆美術館」「スウェーデンとザリパ!」が登壇。「顔で楽器の演奏をする」「外来生物を食べることで壊れてしまった生態環境を取り戻す」など、それぞれのビジネスプランをプレゼンしました。コメンテーターより「マーケットをもっと広くしては?」「知財の調査は?」「もっとクリアに言語化すると?」などアドバイスを含めたやりとりが行われ、リズムよく展開。
続いて海外研修報告として、インドネシア、フィンランド、インドに派遣された各チームからの発表がありました。
愛知県による学生向け起業家育成プログラム「STAPS」で愛知県庁賞を受賞した「neuro pick」によるスリープテック分野のビジネスアイデアのピッチでは、コメンテーターの皆さんより内容について興味津々なコメントが寄せられました。
ビジネスプランコンテスト入賞の5チーム「TradeWind」「AdonisRiris」「LiemPia」「Umail Japan株式会社」「SAZO」からは、ボードゲームや海外ECサイトのポータルをめざすビジネスプランなどが披露され、コメンテーターの皆さんからは次の一手につながる視点などが寄せらせました。
学生たちの想いの込もった全13チームによる発表後に、名古屋大学産学官推進本部 加藤滋氏より講評をいただきました。「2013年に始まった『Tongaliプログラム』は、「大学の使命は教育であり、起業が目的ではなく手段である」という意思のもと、‘とんがった人材を育てる’という視点で活動してきました。大学の研究結果を社会実装する、という試みでもあります。ここが到達点ではなく出発点となりますが、講評ということで感想を言うと、とても‘ワクワク’しました。予選よりしゃべりも資料も格段にうまくなっているので、さらに厳しい視点からのアドバイスを成長の糧としてもらえれば嬉しい。」と締めくくっていただきました。
3.CxO人材セッション「スタートアップがスケールするCxO人材供給の裏側」
2024年10月に名古屋で開業する日本最大のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」を運営するSTATION Ai株式会社の中島順也 氏をモデレーターに進行する、CxOのリアルな声を様々なキャリアを持つパネリストの観点から聞いていくセッションです。「スタートアップが立ち上がっているなら、共同創業者であるCxO 経営人材は数百名単位で生まれてこなければいけない。」「知り合いをパートナーとして巻き込む方法もあれば、あえて知り合いからではなく信頼できる人に依頼する方法もある」など、それぞれの観点から創業時のチームアップの課題についてディスカッションを行いました。
<モデレーター>
- STATION Ai株式会社インキュベーション事業推進部 部長
中島 順也 氏(ソフトバンクからVCへ参画、現在はSTATION Aiに所属)
<パネリスト>
- 株式会社ヘルスケアシステムズ 代表取締役社長
瀧本 陽介氏 - 株式会社アマテラス 代表取締役CEO
藤岡 清高 氏
(VC所属時に「採用と組織が経営者の課題」と感じて、スタートアップ専門の採用スカウトサービスをスタート、過去に1000名以上の転職を支援) - upto4株式会社 代表取締役
棟兼 彰一 氏
(フィンテック系スタートアップの創業支援) - Beyond Next Ventures 株式会社 執行役員 Talent Partner
鷺山 昌多 氏
(大学発のディープテック領域でのスタートアップへの投資をするVC)
4.サポーターズセッション supported by 三菱UFJ銀行
名古屋大学発のスタートアップ企業である株式会社PREVENTを迎えて、EXITの軌跡について語るセッションです。PREVENTは、2023年12月に住友生命グループにジョインしました。住友生命が、「保険を売る会社」から「ウェルビーイングを売る会社」として変わっていくなかで、その中核を担うためグループに参画したPREVENT。M&A決断のポイントや今後の展望について、これから調達を迎えるスタートアップ起業家と共にお伺いしました。
<登壇者>
- 株式会社PREVENT 代表取締役
萩原 悠太 氏 - 株式会社DeaLive 代表取締役CEO
牧野 正樹 氏 - 株式会社三菱UFJ銀行 東海公務部兼成長企業営業部 部長代理
満永 大二郎 氏
Q.M&Aに至った経緯
A.オープンイノベーションをしてきた中で相性がよかったのが住友生命。なかでも、住友生命の健康プログラムのサービス連携においても好相性でした。私たちが上場に向けて資金調達をしているなかで、M&Aの可能性も検討し、自社が実現したいことを考えた結果、IPOではなくM&Aという選択となりました。
Q.今後の展望
A.今までは特定の自治体もしくは特定の企業で働いている人に対してしか自社のサービスを届けることができなかったのですが、住友生命と一緒になることで、自分たちのサービスをより多くの人々に届けてられるのでは、と可能性を感じています。オープンイノベーション検討の際、両者のアセットから組み立てるプロダクトインになることが多かったのですが、当社の場合は課題を起点に組み立ていく方がうまく連携できることがわかりました。
Q.グループインしてどうだったか?
A.業績のインパクトはまだこれからですが、営業連携など多くのプロジェクトが立ち上がっているので、掛け算での可能性が広がっています。ヘルスケアスタートアップの難所として、現実的なマネタイズと理想を実現する使命感を‘or’で考えるのではなく、‘and’で語り続けることが重要だと感じています。
まとめとして、「ミッション、ビジョン、バリューを起点とすることが大切。事業を抽象化し、「自分たちは何をやっているのか、何者なのか」を明確にしよう。オープンイノベーションや連携は共通項を探して、「重なる点」で検討するといい。」とアドバイスをいただきました。
5.Startup Weekend 名古屋連携企画
全世界で「起業家を生み出す場」として展開する、新規事業を立ち上げる起業体験イベント「Startupweekend」!毎回募集開始とともに即満員となるほどの人気で、多くのイノベーターを輩出してきたStartupWeekend名古屋によるトークセッションです。Startupweekend名古屋2023で優勝をした「味噌煮込みうどんパン普及委員会」チームメンバーの桂川将典氏を迎え、イベント運営側のマツモトサトシ氏の進行で話を伺いました。会場で「味噌煮込みうどんパン」の販売を行っており、売れ行きも好調でした。
Startupweekendとは
アメリカで始まった「アントレプレナーを地域各所で増やしていく」という考えで開催されているコミュニティ。起業最初の1年間で起こり得ることを、週末3日間で体験する。その経験を通してアントレプレナーの行動様式を学び、新規事業に必要なことを身につけていく。
1日目 アイデア共有・チームづくり
2日目 仮説立案→コーチング→仮説検証
3日目 仮説検証→ピッチ・審査
Q.どんなアクションを続けている?
A.「私は『味噌煮込みうどんパン』でメーカーをめざすのではなく、名古屋で「味噌煮込みうどんパンが、焼きそばパンに置き換わるくらいに普及する」ことを目指しています。普段は北名古屋市の市議会議員をしておりまして、まちおこしの一環で活動しています。地域のベーカリーに協力していただき試作を繰り返していますが、本日は「試作第n号」を販売していますので、食べた感想などを聞かせてください。」
会場の参加者からも、「私も『StartupWeekend名古屋』に参加した経験を生かし、現在は事業を立ち上げて進めています。」を声が上がっていました。
6.サポーターズセッション supported by スタメン
「すごいベンチャー100」選出企業の経営者がパネリストとして登壇し、事業をグロースするために鍵を握る「組織づくり」について語っていただきました。「事業を拡大し、イノベーションを起こす組織の共通項は?」成長する組織についての幅広いトークセッションに、会場の皆さんは興味津々に耳を傾けていました。
<登壇者>
- 株式会社スタメン 代表取締役社長CEO
大西 泰平 氏 - 株式会社Acompany代表取締役社長CEO
高橋 亮祐 氏 - 株式会社クラッソーネ代表取締役社長CEO
川口哲平 氏
トークセッションから、一部抜粋してご紹介します。
Q.これまでの組織戦略を振り返って、成功した取り組み、失敗した取り組みについて教えてください。
川口氏:私からは失敗事例を。ひとりで創業し、業績が急拡大した局面で人を採用していったのですが、会社のミッションを明確にしないまま人を増やしたため、2016年に一度組織崩壊。その苦い経験から、ミッション・ビジョン・バリューを作り直しました。採用時の伝え方も考え直したところ、判断も早くなりコミュニケーションコストが大幅に下がり、今では毎日のようにミッションについて言及しています。人によって価値観は違って当たり前なので、毎日毎日繰り返し伝えることで浸透することを学びました。
高橋氏:私もピンチに陥った事例を挙げますと、創業当初は学生向けのサービスを行っていたのですが、勝つために事業ドメインをブロックチェーンの技術に変更したところ、見事に全員が去っていきました。そこからひとりで再スタートを切りました。その際に会社のバリュー、カルチャーなど明文化し、そこに共感してくれる仲間を集めていきました。
大西氏:私は成功事例を。スタメンを3名で創業したのですが、私以外の2名は上場経験者だったためずいぶん助けられました。スタートアップを立ち上げたばかりの方は、上場経験者に創業メンバーに入ってもらう、もしくは相談できる状況にしておくことをお勧めしたいと思います。
MEET-UP AREA(交流・サテライト会場)
ここで本祭典のもうひとつのお楽しみ、交流・サテライト会場で販売されたランチをご紹介します。
今年もお目見え、Deli BAUM HAUSの「TOCKIN’ RICE BOWL」(500円)。来場されていたシェフから「頑張る皆さんの健康を考えて、野菜をたくさん摂っていただけるよう配慮しました。素材にこだわり、ワンコインで買える値段にも徹底的にこだわりました。」とお言葉をいただきました。デリ4種に錦爽どり塩唐揚げ、宮城白石蔵王のふもとで育った竹とりのたまごを使用した煮卵、と栄養バランスの良いお弁当で私たち取材陣もひとときのエネルギーチャージを。
そしてもう一品、販売されていたのが「世界初!みそ煮込みうどんぱん 試作第n号」(380円)。「Startup Weekend 名古屋連携企画」でお話をされていた桂川氏による企画商品です。見た目はコロっとした惣菜パンですが、「味噌煮込みうどんで、パン?」と興味をそそられこちらも実食。具にうどんが入っていて不思議な食感ですが、味噌のほのかな香りとバターの風味が合う!パンが柔らかくてとても美味しかったです。
サテライト会場では、ランチを食べる人、ドリンクを飲みながら歓談する人、展示ブースを回ってスタッフから説明を受ける人、名刺交換をしてビジネストークをする人など、それぞれが思い思いの時間を過ごしていました。
STASUPPO(スタサポ)展示会
ここで、東海のスタートアップを強力にサポートするコミュニティ「STASUPPO(スタサポ)」についてご紹介します。スタサポは、スタートアップが事業プランの相談や事業拡大に向けた人脈づくりに活用できる登録制コミュニティで、先輩起業家や業界知識を持つ弁護士などの登録メンターとマッチングしてメンタリングを受けるサービスを提供しています。またスタートアップ同士の交流会の開催や、支援情報の発信も行っています。事業共創カンパニーである株式会社Relicが、名古屋市からの委託でコミュニティ運営を担っています。
ここ展示交流会場では、スタサポ登録企業がブースを設けて自社サービスの紹介を行っていました。
7.夢を育て、未来を描く
さてここからは、株式会社ユーグレナの創業者であり代表取締役社長の出雲氏の登壇です。ユーグレナ社は、バングラデシュの栄養問題の解決を目指して創業し、誰も成しえないと考えられていた微細藻類ユーグレナの食用屋外大量培養を世界で初めて成功させ、それを起点として事業を展開する企業です。創業のきっかけとなった原体験から、どのように未来を切り開いてきたかを語っていただき、事業への情熱や起業家精神について共有していただける貴重な機会となりました。
—基調講演「僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。」
株式会社ユーグレナ 代表取締役社長 出雲 充 氏
—パネルディスカッション「これからの社会に求められるアントレプレナーシップとは」
出雲氏の基調講演より、一部を抜粋してお届けします。
創業のきっかけは学生時代に訪れたバングラデシュ。栄養失調に苦しむ子どもたちを目の当たりにし、栄養問題を解決したいという思いがはじまりでした。帰国して栄養の勉強をしようと決めて微細藻類ユーグレナの存在を知りました。ユーグレナは植物と動物の両方の特性を持ち、59種類の栄養素が含まれています。困難と言われていたユーグレナの培養に何度も挑戦し、2005年にようやく成功します。ところが培養に成功したものの商品はなかなか売れませんでした。2008年に最初の取引先となったのは伊藤忠商事。それからユーグレナは少しずつ認知度を上げ、2014年に東証一部に上場し、時価総額1000億円の企業となりました。
「スタートアップエコシステムは日本中に作ることができる」と私は思っていて、今日は皆さんにそれをお伝えするために名古屋へ来ました。メガトレンドのメインドライバーは若者とスタートアップです。日本は2025年に、社会課題への関心が高いとされるミレニアル世代とZ世代が、労働人口の半分を占めるようになります。そして政府は成長戦略でスタートアップ支援を掲げています。つまり日本の将来は、デジタルネイティブである若者の起業家精神に火をつけることができるか、にかかっているのです。
イノベーションとは、試行回数と科学技術の掛け算。私はすべての学生がアントレプレナーになれると思っています。奇跡にたどり着くため、失敗のその先へどうやったら到達できるのか、そのためにはメンターとアンカー、そして何より、学生自身が夢を持つ必要がある。諦めずに繰り返し努力することによってイノベーションを、奇跡を、どんな分野でも起こすことができる、ということをお伝えしたい。」と熱いメッセージをいただきました。
興奮冷めやらぬ熱気のなか、第2部のパネルディスカッションへ。
第2部 パネルディスカッション
「これからの社会に求められるアントレプレナーシップとは」
<モデレーター>
株式会社LEO 代表取締役CEO
粟生 万琴 氏
<パネリスト>
- ミテモ株式会社 取締役
飯田 一弘 氏(高校生以下にアントレプレナーシップ教育プログラムを提供) - 名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部 スタートアップ支援室 教授
河野 廉 氏 - 株式会社ユーグレナ 代表取締役社長
出雲 充 氏
出雲氏:世界の先進国において比較すると日本はスタートアップ企業の数が圧倒的に少ないです。日本の課題は、①失敗に対する恐怖、②99%が起業家教育を受けていない。ここは日本のボトルネックなので、改善したら効果がでる、③身近に起業した人がいない、この3つだと私は考えています。
Q.アントレプレナー教育プログラム参加者の心・行動が変化したエピソードについて
飯田氏:名古屋のスタートアップキャンプは1ヶ月のプログラムで、参加者は「価値を作るための軍資金」と2万円を渡されて2週間、自由行動をします。ただし、その2週間後に株主総会を開催する、という前提で行動してもらいます。すると高校生がだんだん野性的な顔に変化していくのがわかります。2万円の使途に失敗して資金を溶かしてしまったり、警備員に怒られながらビラを配ったり、中には何も動けなかったり、とチームによって結果はさまざまなのですが、中には「きっかけをチャンスに変える」ことに成功する学生も出てきます。
河野氏:「Tongali」のプログラムでシリコンバレーに視察に行ったある高校生が、帰国後に意識が変わり自分なりの社会課題を解決する会社を作りました。アントレプレナー教育として、「目的意識」が鍵ではないかと思っています。ピッチするためには国語力も英語力も必要、試算するには数学も必要、と目的を達成するために必要なことが明確になると自発的に勉強をするんです。
出雲氏:学生も、志に火がつくと必要に迫られて勉強する、ということですね。
日本の大学ではアントレプレナー教育が足りていません。アメリカ・ボストンにあるバブソン大学(起業教育の名門校)の教授に「日本が一番学ばなきゃいけないことは何か?」と尋ねたら、「居心地のいいところを飛び出すこと。パッション、使命に出会うために。居心地がいいと感じているなら、成長していない証だから」と。
Q.アントレプレナーシップとは?
飯田氏:出雲さんの講演で「好き」が出てきました。好きを見つけることは、難しく聞こえるかもしれません、私自身もそうだったから。好きを見つけるためには経験をすること。食わず嫌いをとっぱらって体験してみて、いろいろな感情に出会うこと。そこへの感度を高めること。経験から何を思い、何を感じるか。そのアンテナみたいなところがアントレプレナーシップだと私は思っています。
河野氏:私は「世界を変える力」だと思っています。まず自分の周りの社会を変えることで新しい世界が生まれていく。未来をこういう社会にしたい、と皆さん自身で考えることが、世界を変える力につながっていきます。
出雲氏:「好きを見つける」とは、自分を信じて‘居心地の良くないところ’へ飛び込むことです。またアントレプレナーシップマインドを持っている人は「1番」にこだわるはずです。存在を示すためには、どんなことでもいいので1番になる必要があります。
最後の質疑応答では、高校生からこんな質問がありました。
Q.起業するならいつか。大学で技術を身につけてから?
出雲氏:いつやったらいいか、という問題じゃないんです。好きだからやる。儲けたい、儲かりそうなもの、という視点だったら、私はユーグレナで起業していません。解決したい社会課題がないのに高校生で起業しても成功しない。出発点は常に自分。「社会課題とそれを解決する技術、情熱」がセットです。
出雲氏よりアントレプレナーシップを後押しするエールを受け取り、セッションは盛況の内に幕を閉じました。
8.東海“未来を造る”Future Session
初日の締めは、東海圏の起業/新規事業に関わっている人達の交流会です。「スタートアップ」「新規事業推進者」「社会起業家」「地域活性活動家」から「何か新しいコトを始めたいヒト」まで様々な人が集まりました。
会場には高校生の姿も!
彼らに本イベントはどのように映ったのでしょうか。お話を伺ってみました。
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高校生ふたり
中西さん(右):名古屋市がやっている「スタートアップユースキャンプ」のアントレプレナーシップのワークショップに参加しているので、先ほど登壇された飯田さんに誘われて今日は来場しました。ユーグレナの出雲さんのお話で2つ印象に残りました。1つは「1番でないと意味がない」と言っていたこと。SDGsの風潮があるなかで、敢えて競争なんだな、と強いメッセージを受け取りました。私は教育に興味があるのですが、教育において「(競争がなく)一律的なのはどうなんだろう」と思うこともあるので、競争にもプラスの面があるのだと感じました。2つめは、数字などデータを基にお話されていた、ということ。いろんな視点から刺激を受けました。
高村さん(左):「何度失敗しても、何度も立ち上がる」というお話が印象に残りました。学生生活においても、課外活動などでうまくいかないことも多いけど、自分のアプローチの仕方がまずいのであって、環境にマイナス面を押し付けてはいけない、と気がつきました。失敗を恐れず、自分の選択ひとつひとつから導き出される答え、挑戦する心が大事だと思いました。